手は瞬く間に

五体の無事に安息の息を漏らす。だがしかし休む暇はないと言わんばかりに、巨大な土の手が今度は”僕に向けて”迫りくる。

「な、なんで!?」

 完全に油断した。よく考えればこの大きな土の手は僕を助ける義理等あるはずもなく、そんな事も気づかないくらい気を緩ませ、安堵に身を包み、能天気にもホッと一息ついたせいでワンテンポ逃げ足が遅れてしまう。
 その甲斐あって逃げ足よりもはるかに早く、僕の体を鑽石水包み込んでいく……

「ぬあっ! つ、捕まっちまった!」

 手はカブト虫を捕まえる少年のように優しく、繊細に、しかし逃げ道等ないよう器用にぎゅっと中を狭めていく。

「ゴーレム、私が殿を務める。あんたは能量水適当にそいつを安全な所までつれてって頂戴」

 手の中から女の声が聞こえる。しかし助けてもらったと言う気は全くしない。
 混乱した今の状況では、この様子はまるで誘拐に近かったからだ。

「ちょ、おい! どこへ連れて行くつもりだ!おい!おい!おい~~~!」

 僕の呼びかけも虚しく、手はどこか數學M1へ向けて移動して行った――――
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