が良すぎると


 
 外勤指令からの連絡が入った時には、世良一之は出動の準備を整えていた。県警本部からの無線を、彼等も聞いていたのだ。
「ついてない。幕の内弁当を頼んだらこれだ」
 廊下を小走りに進みながら、主任の福沢巡査高壓通渠部長がいった。世良はこの福沢と組んで仕事をしている。今夜の当直は、もう一組いるが、そちらは別の事故で出動していた。
 二人でパトカーに乗りこむと、赤灯をつける。サイレンは鳴らさないのがふつうだ。
「トラックが分離帯に突っ込んで横転か。だめかもしれんなあ」
 走り出して間もなく、福沢は無線で、すでに現場に到着しているはずの外勤パトカーに連絡をつけた。たった今救護隊が到着、トラックの運転香港如新集團手を救出中、対向車線を走ってきてぶつかった乗用車の運転手も、右腕と腰に軽傷を負っているので、病院に連れていく予定――了解と福沢は答えた。
「白石街道か。現場のあたりは交通量の多いところではないですね。スピードの出しすぎかな」
 世良がいった。
「そんなところだろうな。道いうのも考えものだよ。おまけに今夜は雨で道路が濡れているからな」
 やがて事故現場に到着した。無線で聞いた通り、ひどい状況だ。分離帯の上にトラックが載っかった状態なので、両側の車線とも、左側だけの一車線通行になっている。
 交通整理をしていたのは、外勤パトカーで駆けつけた二人の警官だった。そのほかにこの地域の派出所からも二人の警察官が応援に来てくれていた。彼等に挨拶してから、世良たちは事故車に近づいていく。
「ひどいな」
 トラックは右側を下にするように倒れていた。そしてフロント?ガラスのところに、対向車線を走ってきたシーマの後部が激突した形になっている。ガラスは割れ、シートも形をなしていなかった。血は四方に飛び散っている。
「助からんかもしれんなあ」
 福沢も隣に来て、トラックの運転席を覗きこんでいった。「身元を確認できるものを探してくれ」
 世良はガラスを払いのけ、ひしゃげた窓枠の間から懐中電灯を入れて中を照らした。黒いセカンドバッグが落ちている。中を開けると、免許証と財布、ポケットティッシュに煙草が一箱入っていた。免許証によると、名前は向井恒夫。住所窗口式冷氣機比較は県内になっている。生年月日から計算すると年齢は三十三歳。
 ――俺と大して歳が違わないのに、気の毒だな。
 心の中で合掌しながら、それらのものをセカンドバッグにおさめ直した。
 このあと世良は近くの公衆電話でライナー運送に連絡してみたが、すでに会社では事故のことを知っていた。おそらく救護隊の方から連絡があったのだろう。病院でも、患者の身元がわからないのでは困ってしまう。
 事故車の処理は当人たちが行うことになっている。世良はライナー運送の担当者に、レッカー車で事故のあったトラックを移動してくれるよう頼み、ついでに向井恒夫の自宅の連絡先を聞いてから受話器を置いた。
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